太陽光の草刈りでケーブルを切断する事故は、なぜ起きるのか?

太陽光発電所で刈払機を使う草刈り作業

不注意で起きるのではありません。地表を這うケーブル、裏側からの衝撃に弱いパネル、石を飛ばす回転刃。この3つが揃っている場所で刈払機を回している以上、確率の問題として起きます。

太陽光発電所の草刈りで最も多い事故はケーブルの切断です。次いで飛び石によるパネルの破損。これは業者に依頼した場合でも起きます。

「慣れた人がやれば大丈夫だろう」と思われるかもしれません。ただ、事故が起きるのは腕の問題ではなく、発電所という場所の構造に理由があります。何が起きているのかを分解します。

目次

理由1 ケーブルが草の中に隠れている

低圧の野立て発電所では、ケーブルを地中に埋設せず、地表に転がしたまま、あるいは架台の下に這わせたままにしている設備が多くあります。コストを抑えるために、そう施工されています。

問題は、草が伸びるとこのケーブルが完全に見えなくなることです。膝の高さまで草が茂った状態では、どこにケーブルが走っているのか、外から判断できません。

刈払機の刃は地面すれすれを高速で回っています。見えないものは避けられません。

切断すると、その回路が丸ごと止まります。発電量は落ちますが、低圧発電所の多くは遠隔監視を入れていないため、止まったこと自体に気づけません。次に誰かが現地に行くまで、そのままです。切れた箇所によっては漏電やアーク放電につながり、乾いた草に引火する危険もあります。

理由2 パネルは裏側からの衝撃に弱い

意外と知られていないのが、この点です。

太陽光パネルの表面は強化ガラスで、ある程度の衝撃には耐えます。しかし裏側は非常に弱い。バックシートと呼ばれる樹脂のフィルムで覆われているだけの構造です。

刈払機が飛ばした石は、地面から斜め上に飛びます。野立ての架台は地面から数十センチの高さなので、石はちょうどパネルの裏側に当たります。いちばん弱い場所に、いちばん当たりやすい角度で飛ぶ。

同じ理由で、竹やササのような硬くて成長の早い植物も、伸びるとパネルを裏側から突き破ることがあります。

理由3 破損しても、その場では分からない

草刈り中にパネルを割った場合、ガラスが派手に割れれば気づきます。しかし裏側からの衝撃では、外見上ほとんど変化がないまま、内部のセルだけが損傷していることがあります。

この状態のパネルは、その部分に電気を通そうとして発熱します。ホットスポットと呼ばれる状態で、長期間続くと故障の原因になります。

製品評価技術基盤機構(NITE)に報告された太陽光発電設備の事故では、外的要因でパネルが破損して通電異常から発熱し、パネル裏の端子ボックスから配線系・接続箱へ影響が及んで発火・延焼した事例が挙げられています。

作業した日は何事もなく終わり、数ヶ月後に問題が表面化する。原因の特定も難しくなります。

理由4 人が怪我をする

設備の話ばかりしてきましたが、作業者側のリスクも同じ構造から生まれます。

  • 回転刃が硬いものに当たったときの跳ね返り(キックバック)
  • 飛び石が自分や周囲に当たる
  • 夏場の熱中症。発電所は日陰がなく、パネルからの照り返しで地表温度が上がる
  • 草むらに潜むマムシ・ヤマカガシ、繁茂した場所に作られたスズメバチの巣

低圧発電所は人目のない場所にあることが多く、一人で作業していて動けなくなると、発見が遅れます。

「気をつければ防げる」のではない、という話

ここまで挙げた4つは、どれも「注意していれば防げる」類のものに見えます。実際、対策としては次のようなことが言われています。

  • 事前にケーブルの位置を確認しておく
  • ケーブル周りは機械を使わず、鎌で手刈りする
  • 回転刃ではなくナイロンカッターを使う
  • 地面に刃を当てず、少し上を撫でるように刈る
  • 一人で作業しない

どれも正しい。ただ、これらを全部守ったとしても、可能性はゼロにはなりません。草に隠れたケーブルの位置を完璧に記憶している人はいませんし、地面の凹凸で刃が地面に触れる瞬間は必ずあります。

年に2〜4回、20年間繰り返す作業です。1回あたりの確率が低くても、回数を掛ければ十分に起こりうる数字になります。

それでも起きたときに、誰が払うのか

ここが一番の問題です。

自分で作業して割った場合、パネルの破損はメーカー保証の対象外になります。自己負担での交換です。同型のパネルが製造終了していると、1枚だけ交換することもできません。

業者に依頼していた場合は、その業者が賠償責任保険に入っているかどうかで結果が変わります。造園業者や便利屋に頼んだ場合、太陽光設備の損害までカバーされているとは限りません。

業者に草刈りを依頼するときに確認すること

1. 太陽光発電所での作業実績はありますか

一般の草刈りと発電所の草刈りは別物です。ケーブルの位置を気にする習慣があるかどうかが分かれ目になります。

2. ケーブル周りはどう処理しますか

「機械で全部やります」という回答なら、その時点で危険です。

3. 賠償責任保険に入っていますか。太陽光設備の損害は対象ですか

加入の有無だけでなく、対象範囲まで確認してください。

4. 作業後の報告はありますか

ケーブルの被覆に傷が付いた、パネルに石が当たった。こうしたことを申告してくれるかどうか。切断を隠されて翌年の点検まで気づかなかった、という話は実際にあります。

当社が刈払機を使わない理由

岩手太陽光メンテナンスでは、刈払機による草刈りを行っていません。

理由はここまで書いてきた通りです。腕でどうにかできる範囲を超えていて、事故が起きたときの損害が作業費とまったく釣り合わないからです。数千円の作業のために、数十万円のパネル交換や回路の復旧が発生する可能性を、こちらから持ち込みたくありません。

代わりに除草剤の散布と防草シートで対応します。ケーブル周りや進入路など、どうしても必要な箇所は鎌で手刈りします。

除草の考え方と防草シートの使い分けはこちらのページにまとめています。

まとめ

  • ケーブル切断が起きるのは、地表配線が草に隠れるから。腕の問題ではない
  • 飛び石が危ないのは、パネルの裏側が構造的に弱く、石が当たりやすい角度で飛ぶから
  • 裏側からの損傷はその場で気づけず、後から発熱・発火につながることがある
  • 自分で割ったパネルはメーカー保証の対象外
  • 業者に頼むなら、発電所での実績・ケーブル周りの処理・保険の対象範囲・作業後の報告の4点を確認する
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出典

  • 製品評価技術基盤機構(NITE)「製品安全情報マガジン Vol.473 太陽光発電設備の事故」(2025年3月25日)
  • エナジービジョン「太陽光発電の雑草対策 費用や失敗しない除草方法を解説」(2025年6月17日更新)
  • アースコム「太陽光パネルの破損原因を詳しく!破損による影響や対応策」
  • 一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電システムの不具合事例とその対処例」(2020年3月31日)
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