結論から言います。低圧太陽光の維持費で見落とされるのは、メンテナンス代ではなく「毎年出ていかないが、必ず来る費用」です。パワーコンディショナの交換がその筆頭で、ここを積み立てていない発電所は、10年目以降に必ず資金繰りで詰まります。
そして、遠方に発電所を持っている方ほど、この見落としが起きます。現地を見ていないと、設備が今どの段階にいるかが分からないためです。
維持費は2種類に分けて考える
収支を見直すとき、多くの方が年間の支出だけを並べます。ところが低圧太陽光では、数年に一度・20年に一度しか来ない費用のほうが金額が大きい。この2つを混ぜると、実態が見えません。
| 毎年出ていく費用 | いつか必ず来る費用 | |
|---|---|---|
| 内容 | メンテナンス、除草、保険、税、通信費、現地確認の交通費 | パワコン交換、架台補修、フェンス修繕、撤去 |
| 特徴 | 金額は小さいが毎年 | 金額が大きく、時期が読める |
| 失敗の形 | 削りすぎて設備が傷む | 積み立てておらず払えない |
毎年出ていく費用
1. メンテナンス・点検
低圧(50kW未満)の年間メンテナンス費用は、全国的には年10万〜15万円前後が相場とされています(solaromgeo)。ただし多くの場合、除草は別料金です。「年10万円」の見積に除草が入っていないと、実際の支出はここに上乗せされます。
2. 除草
本州の内陸部であれば、年2〜3回の管理が必要になります。業者に頼んだ場合の相場は情報がばらついており、草刈りで1㎡あたり50円〜(SOLSEL)から200〜300円+処分費(アースコム)まで、同じ項目で数倍の開きがあります。年間除草費として7.4万〜10万円とする例もあります(エナジービジョン)。
この幅が何を意味するかは、除草の見積が6倍違う理由にまとめています。
3. 現地確認の交通費と時間(遠方に持っている場合)
これを維持費に入れている方は、ほとんどいません。
年に1回だけ様子を見に行くとしても、遠方であれば新幹線または高速道路の往復、レンタカー、場合によっては宿泊が発生します。往復で数万円、時間は丸一日から二日。これが毎年、確実に出ていきます。
しかも、年1回の訪問で分かることは限られています。行った日に草が伸びていなければ「問題なし」と判断してしまい、その2ヶ月後の状態は誰も見ていません。費用をかけて行っているのに、確認の精度が上がらないという構造です。
実際、遠方の管理負担を理由に発電所を手放す方は少なくありません。太陽光発電所の売却仲介サイトには、購入時に「メンテナンスフリー」と説明されたが実際には雑草対策が必要で、現地確認にも時間と費用がかかるため売却を決めたという所有者の事例が掲載されています。
4. 保険
火災保険(動産総合保険)と、施設賠償責任保険。賠償責任のほうを掛けていない発電所が少なくありません。フェンスが倒れて通行人に当たった、飛散したパネルが隣家を壊した、除草剤が隣の田んぼに入った。これらは設備の損害ではなく、他人への賠償です。
5. 固定資産税(償却資産)
太陽光発電設備は償却資産として課税対象になります。評価額は年々下がりますが、ゼロにはなりません。市町村への申告が必要です。
6. 土地の費用
賃借なら地代、所有なら土地の固定資産税。雑種地として評価が変わっている場合があります。
7. 通信費・遠隔監視
監視システムの利用料と通信費。月額数千円でも、20年では相応の金額になります。
いつか必ず来る費用
1. パワーコンディショナの交換(最大の項目)
これが本命です。パワコンの寿命は10〜15年とされ、2012年のFIT開始から14年が経った今、初期案件はまさに交換期の真ん中にいます。設備の不具合の約7割はパワコンが原因とされています(サンオブサン)。
低圧では複数台構成が一般的で、交換は1台では済まないことが多い。同じ時期に設置したものは、同じ時期に寿命が来ます。しかも古い機種は製造が終わっており、後継機への置き換えになるため周辺部材の変更が伴うことがあります。
ここが、低圧太陽光で最も多くの人が計画していない支出です。年間の売電収入を全部生活費や返済に回していると、この時期に現金がありません。
2. 架台・基礎の補修
地際の錆、凍上による杭の浮き、不同沈下。早期なら塗装で数万円、進行すれば部材交換です。判断の基準は架台の錆の記事にまとめています。
3. フェンス・標識の修繕
台風や積雪で倒れます。柵塀と標識の設置は求められている措置なので、放置はできません。
4. パネルの部分交換
落雪、飛来物、経年でのセル劣化。全数交換は稀ですが、数枚単位の交換は起こります。
5. 撤去・処分費用
FIT期間終了後の解体撤去費用については、売電収入からの積立が制度として求められています。これは経費というより、最初から差し引かれている前提のお金です。
この構造から言えること
低圧太陽光の収支を見るとき、「年間の売電収入 − 年間の維持費」で黒字だから大丈夫、という計算は成立しません。
正しくは次です。
年間の売電収入 −(毎年の維持費)−(いつか来る費用を年数で割った積立額)
パワコン交換を15年目に見込むなら、その費用を15で割った額を毎年の支出として計上しておく。これをやっていないと、帳簿上は黒字なのに現金がないという状態になります。
ここを削ってはいけない
維持費を圧縮したくなったとき、真っ先に候補に挙がるのが点検です。これが最も損をします。
- パワコンの停止に気づけない:低圧の複数台構成では、1台止まっても発電量は残ります。売電明細では判別できません
- 錆は初期なら安く止まる:表面の赤錆なら数万円、進行すれば部材交換
- 草は放置した年数分だけ高くなる:膝丈と胸丈では作業量が違い、木本化すれば刈払機では処理できません
- 売却時の査定に効く:管理履歴のない設備は、買い手にとってリスクです。定期的な管理が行われていない設備は査定額が下がるという見解は、売却仲介の各社が共通して示しています
削るなら点検ではなく、同じ内容をより安く出している先に切り替えるのが正解です。
遠方に持っているなら、費用の置き換えができる
年1回の現地確認に往復数万円と丸一日を使っているなら、その費用と時間を、そのまま管理の委託に置き換えられます。
当社は岩手県内で低圧太陽光発電所の保守管理に携わってきました。年間メンテナンスは初年度77,000円〜、2年目以降99,000円〜(税込・敷地1,200㎡まで)で、除草を含みます。年2回伺い、そのつど写真17枚の報告書をお送りします。
相場が年10万〜15万円で除草が別料金という構成が多い中、除草込みでこの金額に収めています。これは地元で完結しており、遠方からの移動費が乗っていないためです。対応エリア外は初年度121,000円〜、2年目以降143,000円〜となります。
単発の対応や個別項目の金額は料金ページに全て記載しています。点検で見る項目は点検内容のページをご覧ください。
収支を見直すなら、順番がある
まず、いつか来る費用がいつ来るのかを確定させてください。パワコンの設置年と型番が分かれば、交換時期はおおよそ読めます。そのうえで、毎年の維持費を見直す。この順番が逆になると、点検を削って交換時期を早めるという最悪の結果になります。
無料診断では、現地に伺わずに分かる範囲をお伝えしています。発電所の所在地をお知らせいただければ、航空写真から敷地面積を算出し、標識やフェンスの状況、除草剤が使用できる敷地かどうか、概算の費用をメールでお送りします。ご自身で現地に行く必要はありません。
対応エリアは岩手県および宮城県北部です。対応エリア外の発電所についても、無料診断と単発のご依頼は承っておりますので、まずはご相談ください。
