2022年7月から、太陽光発電設備の解体・撤去にかかる費用が、売電収入から差し引かれています。これは税金でも手数料でもなく、将来の撤去のために自分のために積み立てられているお金です。ただし、条件を満たさなければ戻ってきません。
「以前より入金が少ない気がする」「明細に見慣れない項目がある」。この原因が、廃棄等費用の積立てであることがあります。
制度としては始まって数年が経ちますが、設備ごとに開始時期が違うため、最近になって引かれ始めた方もいます。仕組みを整理します。
何のための制度か
資源エネルギー庁のガイドラインによれば、この制度が作られた背景は明確です。
太陽光発電事業は参入障壁が低く、事業主体の変更も行われやすい。加えて太陽光パネルには鉛やセレン等の有害物質が含まれています。そのため、発電事業の終了後に設備が放置・不法投棄されるのではないかという懸念がありました。
撤去費用の積立ては、2018年に事業計画策定ガイドラインで遵守事項とされ、定期報告での報告も義務化されていました。ところが積立ての水準や時期が事業者の判断に委ねられていたため、実施率は低い状況が続きました。
そこで、法改正により源泉徴収的な外部積立てという仕組みが導入されました。事業者の意思に関わらず、売電代金から自動的に差し引く方式です。
誰が対象か
FIT制度・FIP制度の認定を受けた10kW以上の太陽光発電設備が対象です。低圧の野立て(10〜50kW未満)は、当然に含まれます。
なお、風力発電設備についても対象とすることが決まっており、こちらは2027年4月からの開始とされています。
いつから引かれるのか
ここが最も誤解されている点です。全員が2022年7月から一斉に始まったわけではありません。
積立期間のルール
- 原則:調達期間が終了する日から起算して10年前の日以降、最初の検針日から積立開始
- 例外:上記の日が2022年6月30日以前に到来する場合は、2022年7月1日以降、最初の検針日から開始
- 終了:いずれも調達期間が終了する日まで
低圧の調達期間は20年です。つまり運転開始から10年が経過した時点で、積立てが始まります。
| 運転開始 | 調達期間終了 | 積立開始 |
|---|---|---|
| 2012年 | 2032年 | 2022年7月(制度開始と同時) |
| 2014年 | 2034年 | 2024年 |
| 2016年 | 2036年 | 2026年 |
| 2018年 | 2038年 | 2028年 |
「うちはまだ引かれていない」という方も、いずれ必ず始まります。そして始まる年は、運転開始年から10年後です。ご自身の設備がいつからかは、運転開始日を確認すれば計算できます。
いくら引かれるのか
金額は固定ではありません。次の式で毎月計算されます。
積立額 = その月の電気供給量(kWh)× 解体等積立基準額(円/kWh)
※円未満の端数は切り捨て
ポイントは3つです。
- 発電量に比例する よく発電した月は多く引かれ、少ない月は少なく引かれます
- 毎月の検針日ごとに計算される 年1回まとめてではありません
- 基準額は調達価格ごとに決まっている 国が告示で定めており、設備に適用されている調達価格に対応する額が使われます
単価はご自身の調達価格によって変わります。40円で売っている設備と、18円で売っている設備では、適用される基準額が異なります。正確な金額は、電力会社から毎月届く通知に記載されています。
誰が管理しているのか
積み立てられたお金は、電力会社が持っているわけでも、国庫に入るわけでもありません。
仕組みとしては、電力会社が売電代金から積立金相当額を差し引き、それを推進機関(電力広域的運営推進機関)に納付するという流れです。法律上は、事業者が電力会社を経由して推進機関に積み立てている扱いになります。
ここで押さえておくべき点があります。積立金に利息は付きません。
ガイドラインでは、積立金の原資となる調達価格が国民負担によって支えられていることを踏まえ、運用で利息が生じた場合も、国民負担を軽減するために管理業務費用に充てるとされています。その代わり、事業者から管理手数料を徴収することもありません。
取り戻せるのか
取り戻せます。ただし自動的には戻ってきません。申請が必要です。
取り戻せるのは、原則として設備の解体・撤去の費用に充てる場合です。
| 場面 | 取戻しが認められる条件 |
|---|---|
| 事業を終了する | 基礎・架台を含めた設備全体を解体・撤去する場合。積み立てられた全額 |
| 事業を縮小する | 廃棄するパネルが、認定上のパネル出力の15%以上かつ50kW以上である場合。金額には上限あり |
| 調達期間終了後に全パネルを交換 | 当初のパネルを全て交換する場合 |
低圧の設備では、2番目の「縮小」の条件を満たすことはまずありません。50kW未満の設備で50kW以上を廃棄することはできないためです。つまり実質的には、全部撤去するときに全額を取り戻すという運用になります。
申請には書類が要る
取戻しの申請には、次のような書類が必要です。
- 申請書(定められた様式)
- 印鑑証明書
- 解体・撤去業者との契約書の写し
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し
- 写真(取り外し前・中・後)
- 領収書
- パネルの含有化学物質と製造期間の情報が記載された書面
「撤去したので返してください」だけでは通りません。適切に廃棄したことを証明する必要があります。とくにマニフェストと写真は、撤去のときにしか取れません。撤去業者を選ぶ段階で、これらを出してもらえるか確認しておく必要があります。
★足りなかったら、自己負担
ここが制度上、最も重要な点です。
積立金は「撤去費用の全額」ではありません。国が定めた基準額に基づいて積み立てられるもので、実際の撤去費用がそれを上回れば、差額は事業者が負担します。
参考として、標準的な太陽光発電設備の廃棄費用の中央値は、コンクリート基礎で約1.4万円/kW、スクリュー基礎で約1.1万円/kWという調査結果が示されています。50kWの設備なら、単純計算で50万円から70万円という規模です。
そして、この金額は撤去する時点の人件費・処分費で決まります。今から10年後、20年後にいくらになっているかは誰にも分かりません。
積立金があるから撤去費用は心配ない、という理解は危険です。「一部が確保されている」が正確なところです。
売却するときはどうなるか
これを知らずに売買している方がいます。
外部積立てを行っていた事業者が認定事業者としての地位を譲渡する場合、積立金を取り戻せる地位は法律上自動的に移転します。つまり、それまで積み立てたお金は、買い手のものになります。
売る側から見れば、自分が積み立てた分を置いていくことになります。買う側から見れば、既に一定額が積まれた状態の設備を引き継ぐことになります。
売買価格の交渉で、この積立残高が考慮されているかどうかを確認してください。数十万円規模の話になり得ます。
中古で購入した場合に確認すべきことはこちらの記事にまとめています。
内部積立てという選択肢はあるか
制度上、一定の要件を満たす事業者には、外部積立てではなく自社で積み立てる「内部積立て」が認められています。
ただし要件は厳しく、電気事業法上の発電事業者であること、設備が事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)であること、金融機関との厳格な資金管理契約があること、または上場企業として監査済み財務諸表を開示していることなどが求められます。
低圧の野立てを個人で保有している場合、この選択肢は事実上ありません。外部積立て一択です。
収支の見方が変わる
この制度が意味するのは、売電期間の後半10年間は、手取りが減るということです。
発電量が同じでも、入ってくる金額は積立分だけ少なくなります。返済計画や生活費の見込みを、運転開始当初の売電額のまま置いていると、10年目以降にずれます。
後半10年で押さえておくこと
- 手取りが積立分だけ減る
- 同じ時期にパワーコンディショナの交換時期が重なる(寿命は10〜15年とされます)
- 架台の錆やフェンスの傷みも、年数とともに出てくる
- 積立金は撤去にしか使えない。修繕には使えない
4番目が見落とされます。積み立てているお金があっても、パワーコンディショナの交換には充てられません。撤去費用とは別に、修繕の資金を用意しておく必要があります。
維持費の全体像は低圧太陽光の年間維持費は、本当はいくらかかるのかに整理しています。
まず確認すること
- 自分の設備の運転開始日 受給契約書で分かります。ここから10年後が積立開始です
- 電力会社からの通知 毎月、買取費用と積立金の額が通知されているはずです
- 通知が届く連絡先 中古購入や相続で、前の所有者のままになっていないか
- 積立残高 推進機関に照会できます(電力会社ではありません)
3番目が、遠方にお住まいの方や、設備を引き継いだ方にとっては要注意です。通知が届いていなければ、いくら積み立てられているかを知る機会がありません。
ガイドラインでは、認定事業者は電力会社から毎月案内される積立金の額等を記載した通知を保管することとされています。撤去の際にこの記録が必要になります。
制度を知っていても、設備は傷む
ここまで制度の話をしてきましたが、実務として重要なのは別のところにあります。
積立てが始まる時期は、設備が傷み始める時期と重なります。運転開始から10年。パワーコンディショナの寿命に差しかかり、架台の錆が出始め、草の管理を続けてきた結果が敷地に表れる頃です。
手取りが減る時期に、修繕の必要が出てくる。この2つが同時に来ることを見込んでいるかどうかで、後半10年の資金繰りが変わります。
当社は岩手県内で低圧太陽光発電所の保守管理に携わってきました。年間メンテナンスは初年度77,000円〜、2年目以降99,000円〜(税込・敷地1,200㎡まで・除草込み)です。年2回伺い、そのつど写真17枚の報告書をお送りします。立会いは不要ですので、現地に行かずに状態を把握していただけます。
点検で見る項目は点検内容のページ、費用は料金ページにまとめています。制度面については既設FIT発電所は何をすればいいのかもあわせてご覧ください。
まとめ
- 2022年7月開始。対象はFIT・FIPの10kW以上の太陽光
- 積立開始は調達期間終了の10年前から。低圧なら運転開始から10年後
- 積立額は発電量×基準額で毎月変わる。基準額は調達価格ごとに国が定める
- 管理は推進機関。利息は付かない
- 取り戻すには申請が必要。撤去の契約書・マニフェスト・写真・領収書が要る
- ★実際の撤去費用が積立額を上回れば、差額は自己負担
- ★売却すると、取り戻せる地位は買い手に移転する
- 後半10年は手取りが減る。同じ時期にパワコンの交換時期が重なる
発電所の所在地をお知らせいただくだけです。航空写真から敷地面積を算出し、標識やフェンスの状況を含めた概算のお見積りを、2営業日以内にメールでお送りします。現地には伺いません。
対応エリアは岩手県および宮城県北部です。対応エリア外の発電所についても、無料診断と単発のご依頼は承っております。
出典
- 資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」(2021年9月公表・2026年4月改定)
- 資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」
- 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法および同法施行規則
- 京セラ「パワーコンディショナ(パワコン)の寿命は?交換時期・費用・故障サインを解説」(2025年5月)
本記事は2026年8月時点のガイドラインに基づいています。解体等積立基準額および廃棄等費用の想定額は、調達価格・基準価格ごとに告示で定められており、改定されることがあります。ご自身の設備に適用される金額は、電力会社からの通知および資源エネルギー庁の告示をご確認ください。積立金の残高照会は推進機関が窓口となります。