太陽光発電所のフェンスと標識は、どこまでやれば足りるのか?

柵塀と標識の設置は、事業計画策定ガイドラインで求められている措置です。守っていない状態が続くと、指導の対象になります。ただし、満たしていない発電所は珍しくありません。まず何が欠けているかを確認するところからです。

太陽光発電所を持っていると、フェンスと標識の話が必ず出てきます。ところが「設置してください」とは書かれていても、どの程度のものを、どこに、何を書いて設置すればいいのかが分かりにくい。

そして実際に発電所を見て回ると、設置されていない、壊れたまま、あるいは記載内容が古いという設備が相当数あります。

整理します。

目次

なぜ求められているのか

理由は単純で、感電と事故を防ぐためです。

太陽光パネルは、日が当たっている限り発電を止められません。ブレーカーを切っても、パネル側の配線には電圧がかかったままです。この状態の設備に、事情を知らない人が立ち入ることが危険なのです。

子どもが入り込む。近隣の方が草を刈ろうとして敷地に入る。ケーブルが垂れているのに気づかず触れる。いずれも実際に起こりうることで、事故が起きた場合の責任は発電所の所有者に来ます。

標識は「ここは発電設備であり、危険がある」と示すため。フェンスは、そもそも入れないようにするため。この2つで役割が分かれています。

混同されやすい2つの表示

発電所に掲示するものには、役割の違う2種類があります。

  • 認定発電設備の標識 設備ID・設置者・保守点検責任者・連絡先を記載したもの。設備を特定し、責任の所在を示すためのものです
  • 立入禁止の表示 「関係者以外立入禁止」「感電注意」など。近づく人に危険を知らせるためのものです

この2つは別物です。認定設備の標識だけを設置して、立入禁止の表示がない発電所は少なくありません。逆に、立入禁止の看板はあるが認定設備の標識がない、というケースもあります。

立入禁止の表示は、フェンスの外周・出入口・進入路側など、人が近づく経路に対して掲示します。1枚を敷地の片隅に貼っただけでは、反対側から入る人には届きません。

標識に何を書くのか

標識には、設備と責任者を特定できる情報を記載します。一般的に求められる項目は次のとおりです。

記載する項目

  • 設備の名称
  • 設備の所在地
  • 設備のID(FIT認定を受けた際に付与される番号)
  • 発電設備の区分と出力
  • 設置者(事業者)の氏名または名称
  • 保守点検責任者の氏名または名称
  • 連絡先(緊急時に連絡が取れるもの)

最後の2つが実務上いちばん重要です。ここに書かれた連絡先が、外部から発電所へ到達できる唯一の経路だからです。

設置の仕方

  • 外部から見える位置に掲示する 敷地の内側の見えない場所では意味がありません
  • 容易に取り外せない方法で固定する 風で飛ぶ、外れて落ちる状態は不可
  • 記載が読める状態を保つ 色あせて読めなくなったものは、無いのと同じです

屋外に何年も置かれるため、紙やインクジェット印刷では数年で読めなくなります。屋外用の素材で作る必要があります。

★見落とされている「名義が古いまま」の問題

ここが、この記事で最も伝えたい点です。

標識は、設置したときの情報のまま残ります。ところが、所有者や連絡先は変わります。

起きたこと標識の状態
中古で購入した前の所有者の名前と電話番号のまま
相続した亡くなった方の名前のまま
引っ越した・電話番号を変えた繋がらない連絡先のまま
販売店が保守点検責任者だったが、廃業した存在しない会社名のまま
法人化した個人名のまま

いずれの場合も、設備は何も変わっていないため、標識を直そうという発想が出てきません。売買契約でも相続手続きでも、看板の話は誰もしません。

この状態で何が起きるか。近隣の方が連絡できなくなります。

草が越境している、フェンスが倒れている、進入路が塞がっている、不審者が入っている。近隣の方は標識を見て連絡しようとします。ところがそこにあるのは、既に無関係になった人の名前と、繋がらない電話番号です。

苦情も、事故の一報も、誰にも届きません。そして届いたときには、たいてい既にこじれています。

特に、発電所から遠く離れて暮らしている場合、標識が唯一の接点になります。ここが切れていると、現地で何が起きても知る手段がありません。

中古で購入した場合の確認事項はこちらの記事に、販売店と連絡が取れない場合はこちらの記事にまとめています。

フェンスはどの程度で足りるのか

標識と違い、フェンスには「この製品でなければならない」という指定がありません。求められているのは第三者が容易に立ち入れない状態にすることです。

満たすべき考え方

  • 敷地を囲っていること 一部だけでは、開いている側から入れます
  • 簡単に乗り越えられない高さがあること 膝までのロープでは役割を果たしません
  • 出入口に施錠されていること 門扉が開けっ放しでは、囲った意味がありません
  • 立入禁止の表示があること フェンス自体に、または近接した位置に。認定発電設備の標識とは別のものです

ネットフェンス、メッシュフェンス、金網など、要件を満たせば種類は問いません。逆に、ロープを張っただけ、樹木で囲われているだけ、という状態は満たしているとは言えません。

設置しなくてよい場合もある

地形上フェンスの設置が困難な場合や、代替の措置で同等の安全が確保できる場合の扱いは、個別の判断になります。ただし「うちは山の中で誰も来ないから」という理由は、原則として通りません。

壊れたまま、が最も多い

設置していない発電所より、設置したが壊れたままの発電所のほうが多いというのが実感です。

  • 台風で支柱が傾き、フェンスが倒れている
  • 積雪の重みで押し倒され、そのまま春を迎えている
  • 動物が掘って、下に隙間ができている
  • 草が絡んで引き倒されている
  • 門扉の鍵が壊れて、施錠できなくなっている

倒れたフェンスは、囲っていないのと同じです。そして、遠方にお住まいの場合、倒れていること自体を知りません。

寒冷地では特に注意が必要です。地面が凍って持ち上がる凍上により、支柱が押し上げられて傾きます。これを毎年繰り返すと、数年で自立しなくなります。

寒冷地・積雪地での設備の傷み方は岩手の低圧太陽光で、雪と塩害に何が起きているかにまとめています。

満たしていない場合、どうなるか

柵塀と標識は、事業計画策定ガイドラインで求められている措置です。守られていない場合、指導の対象となり、改善されなければFIT認定に影響する可能性があります。

ただし、それ以上に現実的なリスクは次の2つです。

リスク内容
事故が起きたときの責任立ち入った人が感電・転倒・怪我をした場合、囲っていなかったことが問われます
売却時の減額法令要件を満たしていない設備は、買い手が是正費用を見込んで値を下げます

特に2番目は、将来手放す可能性があるなら軽視できません。整えるのに数万円で済むものを放置した結果、査定で数十万円下げられるということが起こります。

まず確認する5点

ご自身の発電所について、次を確認してください。

  1. 標識はあるか 外から見える位置に、読める状態で掲示されているか
  2. 標識の名前と連絡先は、今の自分のものか 前の所有者、亡くなった方、廃業した業者の名前が残っていないか
  3. フェンスは敷地を囲っているか 倒れている箇所、隙間、開いたままの門扉はないか
  4. 施錠されているか 鍵が壊れていないか
  5. 立入禁止の表示があるか 人が近づく側に、読める状態で掲示されているか

2番目は書類を見れば分かりますが、1・3・4・5は現地でしか確認できません。ただし、標識やフェンスの有無であれば、航空写真からある程度読み取れる場合があります。

満たしていない場合も、断るだけにはしません

当社は岩手県内で低圧太陽光発電所の保守管理に携わってきました。法令要件を満たしていない発電所も、お断りするだけではありません。まず整えるところからご提案します。

作業料金(税込)
認定発電設備の標識製作・郵送9,900円年間メンテナンス契約者は7,700円
立入禁止の表示製作・取付/年間メンテナンス契約者のみお問い合わせください
フェンスの設置・補修要見積
進入路の伐採・整理要見積

標識の「保守点検責任者」欄は、オーナー様のお名前で作成します。当社名を記載することはありません。

立入禁止の表示は、年間メンテナンスをご契約の方にお作りしています。訪問時に当社が取り付けます。敷地の四方、出入口、進入路側など、必要な位置に設置できますので、枚数はご相談ください。

立入禁止の表示は取付位置で効果が変わるため、契約者様の訪問時のみ承っております。郵送でのお渡しは行っておりません。

この方針には理由があります。標識に管理業者の名前が入っていると、その業者との契約が終わったときに、また作り直しになります。連絡先が業者のものだと、契約終了後に近隣からの連絡が宙に浮きます。オーナー様の名義であれば、管理を誰に任せても標識はそのままで足ります。

フェンス工事は1件あたり300万円(税込)以下の案件を承っております。年間メンテナンスの点検17項目には、標識とフェンスの状態確認が含まれています。訪問のたびに写真で記録するため、倒れていれば報告が届きます。

点検で見る項目は点検内容のページ、費用は料金ページにまとめています。

制度上の位置づけも確認しておく

2023年3月から、10kW以上50kW未満の設備は「小規模事業用電気工作物」として、技術基準に適合した状態を維持する義務の対象になりました。この義務は所有者にかかります。

既設のFIT認定設備で何が必要かはこちらの記事に整理しています。

まとめ

  • 柵塀と標識は感電と事故を防ぐために求められている措置
  • 標識には設備の特定情報と、保守点検責任者・連絡先を記載する
  • 中古購入・相続・引越し・業者の廃業で、標識の名義と連絡先が古いまま残っていることが多い
  • 連絡先が切れていると、近隣からの苦情も事故の一報も届かない
  • フェンスは製品の指定はなく、第三者が容易に立ち入れない状態にすることが要件
  • 認定発電設備の標識と、立入禁止の表示は別物。片方しかない発電所が多い
  • 設置していないより倒れたままのほうが多い。寒冷地は凍上で数年のうちに傾く
  • 満たしていないと、指導の対象になるほか、売却時の減額要因になる
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発電所の所在地をお知らせいただくだけです。航空写真から敷地面積を算出し、標識やフェンスの状況を含めた概算のお見積りを、2営業日以内にメールでお送りします。現地には伺いません。
対応エリアは岩手県および宮城県北部です。対応エリア外の発電所についても、無料診断と単発のご依頼は承っております。

出典

  • 資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」
  • 経済産業省 関東東北産業保安監督部「小規模事業用電気工作物」
  • 一般社団法人日本電機工業会・一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」

本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。標識の記載事項・柵塀の要件の詳細は、資源エネルギー庁の事業計画策定ガイドラインの最新版をご確認ください。

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