8台のうち1台が止まっても、発電量は1割ほどしか落ちません。この1割は、曇りの日が数日多かっただけでも出る変動幅です。だから明細を見ていても異常だと分かりません。
低圧の野立て発電所には、パワーコンディショナが複数台設置されています。50kW未満の設備なら、5.5kWのものが8台前後、というのがよくある構成です。
このうち1台が止まったとき、何が起きるか。
1台止まっても、明細では見分けがつかない
単純な計算です。8台のうち1台が止まれば、発電量は8分の1、つまり約12%減ります。
これを月々の売電明細で見ると、どうなるか。
| 状況 | 発電量の変化 | 明細を見た印象 |
|---|---|---|
| パワコン1台が停止 | 約−12% | 「今月は少し少ないな」 |
| 曇りの日が数日多かった | −10〜20% | 「今月は天気が悪かったな」 |
| 前年同月との気象差 | ±15%程度 | 「去年もこんなものか」 |
故障による減少が、天候による変動の幅にすっぽり収まってしまいます。明細の数字だけを見て「これは異常だ」と判断するのは、実際には不可能です。
しかも野立ての発電所は、多くの方が月に1回も見に行きません。パワコンの表示部にエラーコードが出ていても、誰も見ていない。
止まっていた期間が長いほど、気づきにくくなる
ここが厄介なところです。
止まった直後なら、前月と比べて「減った」と分かる可能性があります。しかし数ヶ月が過ぎると、1台止まった状態の発電量が「その発電所の平常値」になってしまいます。
翌年の同じ月と比べても、前年も止まっていたなら差は出ません。基準そのものがずれているので、比較しても異常が見えなくなります。
実際、「毎年きちんと草刈りをしている」「点検も年1回している」と認識していた発電所で、発電量解析をしたところ年間29.5万円の損失が出ていた、という事例が報告されています。オーナー本人は問題がないと考えていた状態です。
いくら消えるのか
49.5kWの低圧発電所で、年間の売電収入がおよそ200万円前後という設備は珍しくありません。
その12%が消えると、年間およそ24万円。1年気づかなければ24万円、3年なら72万円が戻ってきません。
パワコンの交換費用よりも、気づかずに放置した期間の損失のほうが大きくなることがあります。
なぜ今、この話をするのか
パワーコンディショナの寿命は10年から15年とされています。太陽光パネルが20〜30年持つのに対し、パワコンは常に稼働して発熱するため、先に寿命を迎えます。
FIT制度が始まったのが2012年。2026年の今は14年目です。初期に設置された発電所は、まさに交換期のただ中にあります。
岩手県内の低圧発電所も、その多くが2012年から2019年ごろの設置です。これから数年のあいだに、順番に不具合が出てきます。
止まる前に出るサイン
完全に停止する前に、いくつか兆候が出ることがあります。
- 表示部にエラーコードが出ている 一時的なエラーで自動復帰することもありますが、繰り返し出るなら要注意
- 表示が消えている 電源が入っていない状態
- 異音がする 冷却ファンの異常など
- 焦げたにおいがする 内部の発熱。この段階では発火のリスクがあります
- 本体が異常に熱い 放熱がうまくいっていない
- 通気孔が草や虫でふさがっている 放熱不良から故障につながります
どれも現地に行って、見て、聞いて、においを嗅がなければ分からないものです。明細では絶対に分かりません。
草がパワコンの故障を引き起こすこともある
雑草対策と機器の故障は、別の話に見えて実はつながっています。
排熱用のファンがあるパワコンでは、通気孔から内部に雑草が侵入することがあります。つる性の植物が架台を伝ってパワコンに到達するケースもある。内部に入り込むとショートや故障の原因になり、火災につながる危険もあります。
枯れ草が本体にかかった状態も危険です。漏電やアーク放電が起きたときに引火します。
では、どうすれば気づけるのか
方法は3つです。
1. 遠隔監視システムを入れる
最も確実です。パワコンごとの発電量が見えるので、1台だけ落ちていればすぐに分かります。ただし機器の設置と月額の通信費がかかり、低圧発電所では導入していない設備のほうが多いのが実情です。
2. 定期的に現地でパワコンを1台ずつ確認する
表示部・音・におい・熱を、全台について見る。あわせて売電メーターの数字が動いているかも確認します。
遠隔監視がない設備では、これが唯一の方法になります。ただし年に1回では、最大で1年分の損失が出ます。
3. 記録を残して比較する
1回見るだけでは「正常かどうか」しか分かりません。前回と比べて何が変わったかが分かる形で記録を残すと、変化を捉えられます。写真で残しておけば、あとから振り返れます。
当社が訪問のたびに見ているもの
岩手太陽光メンテナンスでは、年2回の訪問のたびに、パワーコンディショナの表示部・異常音・異臭・過熱を確認し、あわせて売電メーターの数字が動いているかも見て、写真17枚の報告書に記録しています。
設備を開けたり、電気的な測定をしたりはしません。太陽光発電協会の「日常巡視要領」に準拠した目視点検です。それでも、止まっているか動いているかは分かります。
報告書は訪問のたびにPDFでお送りするので、過去の記録と並べて比較できます。
点検17項目の全リストはこちらのページにまとめています。
まとめ
- 8台中1台が止まっても発電量の減少は約12%。天候変動と区別がつかない
- 数ヶ月経つと、止まった状態が平常値になるため、比較でも見えなくなる
- 49.5kWの設備なら年間およそ24万円が消える計算
- パワコンの寿命は10〜15年。2012年設置の設備は今が交換期
- 兆候(表示・音・におい・熱)は現地に行かないと分からない
発電所の所在地をお知らせいただくだけです。航空写真から敷地面積を算出し、標識やフェンスの状況を含めた概算のお見積りを、2営業日以内にメールでお送りします。現地には伺いません。
出典
- 京セラ「パワーコンディショナ(パワコン)の寿命は?交換時期・費用・故障サインを解説」(2025年5月)
- エナジービジョン「太陽光発電の雑草対策 費用や失敗しない除草方法を解説」(2025年6月17日更新)
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「製品安全情報マガジン Vol.473 太陽光発電設備の事故」(2025年3月25日)
- 一般社団法人日本電機工業会・一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」
本記事の損失額は、49.5kWの低圧発電所で年間売電収入200万円と仮定した場合の概算です。実際の金額は設備の容量・立地・売電単価によって異なります。
