小規模事業用電気工作物で、既設FIT発電所は結局何をすればいいのか?

既設の低圧太陽光発電所と点検記録の書類

結論から書きます。2023年3月より前から運転していて、FIT認定を受けている発電所は、基礎情報の届出も使用前自己確認も必要ありません。残るのは技術基準適合維持義務だけです。

2023年3月20日、電気事業法の改正で、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備が「小規模事業用電気工作物」に分類されました。この話を読んで、自分の発電所は何をすればいいのか分からないまま止まっている方が多いと思います。

調べても「義務化されました」で終わっている記事がほとんどで、既にあるFIT案件は何をすればいいのかに答えているものが見当たりません。岩手県内の低圧発電所は、その大半が2012年から2019年ごろに設置されたFIT案件です。つまり、ほとんどの方が「既設のFIT認定設備」に該当します。

ここを整理します。

目次

課された義務は3つある

改正で加わった義務は、次の3つです。

  1. 技術基準適合維持義務 設備を技術基準に適合した状態で維持し続けること
  2. 基礎情報の届出 設備の所在地・容量などを産業保安監督部に届け出ること
  3. 使用前自己確認 運転開始前に自分で確認し、その結果を届け出ること

混乱の原因は、この3つが全員に等しくかかるわけではないところにあります。いつから使っているか、FIT認定を受けているかで、必要なものが変わります。

自分がどれに当てはまるか

3つのパターンに分かれます。

設備の状況技術基準
適合維持
基礎情報
の届出
使用前
自己確認
2023年3月20日より前から運転
/FIT認定あり

岩手の低圧はほぼこれ
必要 不要 不要
2023年3月20日より前から運転
/FIT認定なし
必要 必要
2023年9月19日まで
不要
2023年3月20日以降に運転開始 必要 必要 必要

FIT認定を受けている設備が基礎情報の届出を免除されているのは、認定の際に同じ情報を既に国に出しているからです。二重に出す必要がない、という理屈です。

FIT認定を受けていない既設設備の届出期限は、2023年9月19日でした。既に過ぎています。もし出していない設備をお持ちであれば、期限後であっても手続きは受け付けられますので、管轄の産業保安監督部にご相談ください。岩手県・宮城県は関東東北産業保安監督部の管轄です。

ただし、届出が必要になる例外がある

ここが見落とされやすいところです。FIT認定の有無に関係なく、届出が必要になる場合が2つあります。

1. 基礎情報の項目に変更があった場合

設置者の氏名・住所が変わったとき、設備の内容が変わったときなどです。相続で名義が変わった、法人化した、引っ越して住所が変わった。こうした変更でも届出の対象になります。

2. 小規模事業用電気工作物でなくなった場合

発電所を廃止したとき、他人に譲渡したとき、増設して50kW以上になったときなどです。「やめる」ときにも手続きが要る、という点は特に忘れられがちです。

使用前自己確認についても例外があります。既設設備は原則として対象外ですが、パネルの増設など、支持物の構造に影響する変更工事を行った場合は、使用前自己確認結果の届出を求められます。

虚偽の届出、または届出をしなかった場合には、30万円以下の罰金の規定があります。手続きそのものは重いものではありません。該当するなら早めに済ませておくほうが確実です。

では、技術基準適合維持義務とは何をすることなのか

既設のFIT案件に残るのは、この義務ひとつです。そして、ここが一番わかりにくい。

「技術基準に適合した状態を維持しなさい」とは書かれていますが、法令には「年に何回、どこを点検しなさい」という具体的な手順が書かれていません。資源エネルギー庁の事業計画策定ガイドラインにも、点検方法の詳細はありません。

そのため実務上は、一般社団法人日本電機工業会と太陽光発電協会が示している「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」に沿った点検を行うことが、義務を果たす形として扱われています。このガイドラインでは、点検の範囲を次のように定めています。

  • 太陽電池アレイ
  • 架台
  • 接続箱・集電箱
  • パワーコンディショナ
  • 太陽光発電用開閉器・漏電遮断器
  • 電力計量器

ガイドラインは、高い場所にあって容易に点検できないアレイなどについては、安全で目視可能な場所(地上等)からの目視でよいとしています。すべてを機器で測定しなければならない、という話ではありません。

当社が行っている17項目の点検も、このガイドラインに準拠した目視点検です。点検内容の全リストはこちら

「今まで何もしていない」場合、何から手をつけるか

経済産業省の調査では、50kW未満の設置者の4割以上が、保守点検の計画がない、または制度の存在を知らないと回答しています。何もしていないことは、決して珍しい状態ではありません。

順番としては、次のようになります。

  1. 自分の設備がどのパターンか確認する 運転開始日とFIT認定の有無。受給契約書か売電明細で分かります
  2. 届出の要否を判断する 上の表で確認し、例外に当たらないかも見る
  3. 点検の記録を残す状態を作る 技術基準適合維持義務は「維持し続けること」なので、一度やって終わりではありません

3番目が一番の負担になります。年に何度も現地に行けない、行っても何を見ればいいのか分からない、という状態のまま何年も過ぎてしまうケースが多い。特に、設置した販売店が撤退してしまった発電所ではそうなりがちです。

制度以前の問題として

ここまで法令の話をしてきましたが、実際に発電所を見て回っていて思うのは、届出よりも先に困りごとが起きている設備が多いということです。

草がパネルの高さまで伸びて影を作っている。架台の脚が錆びて赤くなっている。パワーコンディショナが1台止まっているのに気づいていない。これらは技術基準の話をする以前に、売電収入が目減りしている状態です。

点検は、義務だから受けるものというより、収入が落ちていることに気づくための手段です。8台のうち1台が止まっても発電量は1割ほどしか落ちないため、明細を見ているだけでは分かりません。それでも年間で十数万円の売電が消えます。

まとめ

  • 既設でFIT認定ありなら、基礎情報の届出も使用前自己確認も不要
  • ただし、名義・内容の変更、廃止・譲渡・増設のときは届出が必要(FIT認定の有無に関係なく)
  • 残るのは技術基準適合維持義務。法令に手順の定めはなく、実務上は保守点検ガイドラインに沿った目視点検で対応する
  • 「維持し続けること」が義務なので、記録を残せる状態を作るのが実質的な要件になる

制度の解釈でご不明な点は、小規模事業用電気工作物新制度コールセンター(0570-045-660/平日9時〜17時)でも確認できます。

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発電所の所在地をお知らせいただくだけです。航空写真から敷地面積を算出し、標識やフェンスの状況を含めた概算のお見積りを、2営業日以内にメールでお送りします。現地には伺いません。

出典

  • 経済産業省 関東東北産業保安監督部「小規模事業用電気工作物」
  • 経済産業省「小規模事業用電気工作物に係る保安規律の適正化」(2022年6月29日)
  • 小規模発電設備等保安力向上総合支援事業「届出の様式」
  • 一般社団法人日本電機工業会・一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」

本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。制度は改正されることがありますので、手続きの際は管轄の産業保安監督部にご確認ください。

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