結論から言います。白い粉のような錆(白錆)なら、めっきはまだ機能しています。茶色い赤錆が出ていたら、そこはめっきが切れて母材の鉄が減り始めています。塗って止まるのは前者、塗っても止まらないのが後者です。
そして、この判断は写真1枚では下せません。遠方にお住まいで現地を見ていない場合、業者から「錆びています」とだけ言われた時点で、判断材料がゼロの状態に置かれます。
架台の錆で、費用が桁違いに変わる理由
「架台が錆びている」と業者に言ったとき、返ってくる見積は数万円のこともあれば、数百万円のこともあります。同じ言葉なのに、なぜここまで違うのか。
それは錆が「表面の現象」なのか「断面が減っている状態」なのかで、必要な工事がまったく別物になるからです。ところが現地を見ずに「錆びているなら架台一式交換ですね」と言われるケースがあります。判断の基準を知らないまま話を進めると、必要のない工事を買うことになります。
特に、自分で現地を確認できない状態は不利です。「見てきましたが、かなり錆びていました」と言われて、確かめる手段がない。この状況で高額な見積を出されると、断る根拠を持てません。
まず、めっきが何をしているのかを知る
野立ての低圧太陽光の架台は、多くが溶融亜鉛めっき鋼材です。鉄そのものではなく、鉄の表面に亜鉛の層をかぶせてあります。
この亜鉛には2つの働きがあります。
- 覆い隠す:鉄を空気と水から遮断する
- 身代わりになる:傷がついて鉄が露出しても、亜鉛が先に溶けて鉄を守る(犠牲防食)
2番目が重要です。ボルトの穴あけや施工時の傷で鉄がむき出しになっていても、周囲に亜鉛が残っている限り、鉄はすぐには錆びません。亜鉛が自分から溶けて鉄を守っている。つまり、亜鉛が減っていくこと自体は正常な働きです。
白錆と赤錆の見分け方
| 白錆 | 赤錆 | |
|---|---|---|
| 見た目 | 白〜灰色の粉、こぶ状の付着物 | 茶色〜赤褐色。触ると粉が落ちる |
| 正体 | 亜鉛が酸化したもの | 鉄が酸化したもの |
| 意味 | 亜鉛がまだ残っていて働いている | 亜鉛が尽きて鉄が減り始めている |
| 対応 | 基本は放置でよい。範囲が広ければ経過観察 | 放置すると進む。手当てが必要 |
白錆は、施工から1〜3年の新しい架台にもよく出ます。雨がかりの少ない部材の合わせ目や、雪解け水が長く残る地際に出やすい。白錆を見て「架台が腐っている」と焦る必要はありません。
問題は赤錆です。赤錆が出ているということは、その一点で亜鉛の層が終わっているということ。ここから先は鉄の断面が減っていくだけです。
報告書に「錆あり」とだけ書かれていたら、白錆か赤錆かを必ず確認してください。この区別がない報告は、判断に使えません。
塗って止まるのは、どこまでか
塗装で止まる状態
- 赤錆が表面の変色・粉状にとどまっている
- ドライバーの先で軽くつついても、へこまない・貫通しない
- 部材の厚みが目視で減っていない
- 範囲が限定的(ボルト周り、切断端部、傷の跡など)
この段階なら、錆を落として亜鉛を含む塗料で覆うことで進行を止められます。費用は数万円〜十数万円の範囲で収まることがほとんどです。年2回の点検の中で早期に見つけられれば、この段階で処理できます。
塗っても止まらない状態
- 錆が層状に膨れている(積層錆・こぶ状に浮いている)
- つつくとボロっと崩れる、穴が開く
- ボルトの頭が痩せている、六角の角が丸くなっている
- 部材の縁が刃物のように薄くなっている
- 杭・支柱の地際が細くなっている
この状態は、塗装しても内部の腐食は進みます。表面に蓋をするだけで、むしろ進行が見えなくなります。該当部材の交換が必要です。
ここで問題になるのが、「その場で塗ってしまう業者」です。止まらない段階の錆に塗装をすると、見た目は綺麗になり、写真も撮れます。ところが内部では進行が続き、次に問題が表面化したときには交換以外の選択肢がありません。塗ってはいけない段階で塗ることは、対処ではなく先送りです。
いちばん危ないのは「地際」
架台の錆で本当に注意すべきは、パネルの裏でも横桟でもなく、支柱が地面に入る境目(地際)です。
ここは、
- 土と水と空気が同時に接する(腐食が最も進む条件)
- 雑草に隠れて見えない
- 冬は雪解け水が滞留し、凍結と融解を繰り返す
という三重苦の場所です。しかもここが痩せると架台全体が倒れます。パネルの端が少し錆びても発電は続きますが、支柱が折れれば1列丸ごと倒壊します。
地際の錆が見つかりやすいのは、草が伸びる前の春先です。草が茂れば埋もれて確認できません。年1回、夏に現地を見に行っているだけの発電所では、地際は一度も確認されていないということが起こります。
ボルトも見落とせない
架台本体が健全でも、ボルトだけが先に痩せていることがあります。アルミの部材にステンレスや鉄のボルトを組み合わせている箇所では、異種金属接触腐食が起きて片方が優先的に減ります。
ボルトは母材より小さいぶん、断面が減る影響が大きい。強風時に飛ぶのはパネルではなく、ボルトが効かなくなった押さえ金具ごとのパネルです。
沿岸部は進行が速い
海の近くに発電所がある場合、内陸と同じ間隔で見ていると手遅れになります。海岸からおおむね2km以内は塩害地域、500m以内は重塩害地域とされ、塩分が部材の合わせ目に残り続けます。
塩は雨で流れると思われがちですが、流れるのは雨が当たる面だけです。ボルトの座面、部材の重なり、パネル裏の接触部には残ります。沿岸の発電所で「まだ数年なのに赤錆が出ている」というのは、これが理由です。
土地が安いという理由で沿岸部を選んだ発電所は、この条件を引き受けています。購入時に塩害の説明を受けていないケースも珍しくありません。積雪と塩害が重なる地域では、進行はさらに速くなります。
自分で塗ってはいけない場合
ホームセンターで防錆塗料を買えば、自分で塗ることはできます。ただし次の場合はやめてください。
- ケーブルや接続箱の近く:塗料や工具が被覆を傷つけると地絡・火災につながります。日が当たっている限りパネルは発電を止められません
- パネルの下にもぐる作業:架台がすでに弱っている可能性があります。錆を疑っている構造物の下に入るのは危険です
- 錆を落とさずに上から塗る:進行が見えなくなるだけで、状態は悪化します
「塗れば止まる状態かどうか」の判断そのものが、現物を見ないとできません。判断を間違えたまま塗ると、次に開けたときには交換以外の選択肢がなくなっています。
その場で直させない、という選び方
錆を見つけた業者が、その場で判断して補修まで済ませてしまうと、所有者は「どの段階の錆だったか」を確認できません。塗られた後では、白錆だったのか、止まらない赤錆だったのかが分からなくなります。
当社は、錆を見つけてもその場では補修しません。写真を撮り、位置と進行の程度を報告書に記載してお送りします。補修をご希望の場合は、写真をもとにお見積りをお出しし、次回の訪問時に実施します。
理由は2つです。直すかどうかを決めるのは所有者であるべきだから。そして知らないうちに費用が発生する状態を作らないためです。
母材が痩せている、穴が空いているなど、塗装では止まらない段階まで進んでいる場合は、塗らずに写真を撮り、状態をそのままご報告します。綺麗にすることが目的ではありません。
点検で見ているところ
当社は岩手県内で低圧太陽光発電所の保守管理に携わってきました。架台については、次を見ています。
- 支柱の地際(草を分けて全本数)
- ボルト・ナットの座面と痩せ
- 部材の切断端部・穴あけ部
- アルミと鋼材の接触部
- 架台のねじれ・不同沈下の有無
年2回伺い、そのつど写真17枚の報告書をお送りします。同じ箇所を記録し続けることで、錆が進んでいるのか止まっているのかが、写真を並べるだけで分かります。これは1回きりの点検では得られない情報です。
年間メンテナンスは初年度77,000円〜、2年目以降99,000円〜(税込・敷地1,200㎡まで・除草込み)です。立会いは不要ですので、現地に行かずに架台の状態を把握していただけます。点検の内容は点検内容のページ、費用の内訳は料金ページにまとめています。
売却を考えているなら、錆は先に確定させる
将来的に発電所を手放す可能性がある場合、錆の状態は査定に直結します。買い手にとって、架台の腐食は「いつ、いくらかかるか分からない費用」だからです。
定期的な管理が行われていない設備は査定額が下がるという見解は、売却仲介の各社が共通して示しています。「錆はあるが表面にとどまっており、この時点で補修済み」と記録で示せる状態と、「何年も見ていない」状態では、同じ設備でも扱いが変わります。
錆を見つけたら、まず状態を確定させる
錆は、見つけた時点で「軽いのか重いのか」を確定させるのが最も安くつきます。白錆なら何もしなくていい。表面の赤錆なら数万円で止まる。地際が痩せていれば、倒れる前に交換する。この3つのどれなのかを決めないまま見積を取ると、いちばん高い提案が通ります。
無料診断では、現地に伺わずに分かる範囲をお伝えしています。発電所の所在地をお知らせいただければ、航空写真から敷地面積を算出し、標識やフェンスの状況、除草剤が使用できる敷地かどうか、概算の費用をメールでお送りします。ご自身で現地に行く必要はありません。
対応エリアは岩手県および宮城県北部です。対応エリア外の発電所についても、無料診断と単発のご依頼は承っておりますので、まずはご相談ください。
